労働時間適正把握ガイドライン徹底解説 ――未払い残業リスクを防ぐ!
2025.12.26
労務コラム
こんにちは、あかね社会保険労務士法人です。
今回は、労務管理の根幹である「労働時間の適正把握」について、 厚生労働省が定めるガイドラインのポイントをわかりやすく解説いたします。
特に近年ご相談が急増している
• PCログの状況と残業申請内容が著しく一致していない
•早出・残業の申請が行われていない といったケースについて、ガイドラインに基づきどのように整理・対応すべきかをまとめました。
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■ 1.労働時間の考え方:その時間は「指揮命令下」にありますか?
ガイドラインにおいて、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。 単に実務を行っている時間だけでなく、以下のような時間も労働時間として扱わなければならない点に注意が必要です。
• 準備・後始末:清掃など
• 待機時間: 指示があれば即時に業務に従事すべき「手待時間」
• 教育・研修: 参加が業務上義務付けられているもの
これらは、就業規則などの定めにかかわらず、客観的に見て使用者の指示(明示・黙示を問わず)があったといえるかによって判断されます。
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■ 2.客観的記録を基本とした労働時間把握
使用者は労働時間を適正に把握する責務があります。 始業・終業時刻の確認・記録は、原則として以下のいずれかの方法で行う必要があります。
• 使用者が自ら現認して適正に記録する
• タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録(PCログ)客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する
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■ 3.打刻時刻・PCログと自己申告に著しく乖離ある場合の対応
自己申告制を併用する場合、客観的な記録(入退場記録やPCログ)と自己申告された時間に著しい乖離があるときは、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正を行わなければなりません。以下の確認が必要です。
• 「休憩や自主学習」と報告されていても‥
実際には使用者の指示により業務に従事していれば、労働時間として扱う必要があります。
• 過小申告の慣習がないか…
36協定の上限を守るために、労働者が慣習的に労働時間を少なく申告していないか、管理職がそれを容認していないかを確認してください。
• 申告の阻害要因を排除する…
「残業削減の通達」が、適正な申告を妨げる要因になっていないかの確認も求められます。
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■ 4.勤怠管理の適正化に向けた3ステップ
適正な管理を怠り、賃金台帳に虚偽の労働時間を記入した場合などは、30万円以下の罰金に処されるリスクもあります。以下のステップで体制を整えましょう。
ステップ1:ルールの明確化と十分な説明
労働者および労働時間を管理する者(上司)に対し、ガイドラインに基づき、「何が労働時間にあたるのか」や「正しく自己申告すること」について十分な説明を行ってください。
ステップ2:管理職による実態把握の徹底
労務管理部署の責任者は、現場で長時間労働や把握の不備がないかを管理し、問題があれば解消策を講じる責務があります。必要に応じて労使協議組織(労働時間等設定改善委員会など)を活用することも有効です。
ステップ3:記録の適切な保存
タイムカード、PCログ、残業命令書などの労働時間に関する書類は、3年間保存する義務があります。
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■ 最後に
労働時間管理は、単なる事務作業ではなく、企業のコンプライアンスと社員の健康を守るための最優先事項です。
「今の運用で未払い残業リスクはないか?」「今の勤怠管理だと不安」 といった疑問がございましたら、是非お気軽にご連絡ください。
あかね社会保険労務士法人

