職場を守るために企業が取り組むべき5つのこととは?

毎日を過ごす職場だからこそ、安心できる場所であってほしい…!

仕事って、人生の中でとても大きな時間を占めるもの。
だからこそ、「気持ちよく働けるかどうか」は、私たちの暮らしの質そのものを左右する大事なテーマですよね。

でももし、職場で心ない言葉をかけられたり、理不尽な対応をされたりしたら…。
それだけで、一日が台無しになってしまうこともあります。

昨今、「ハラスメント」という言葉をよく聞くようになりました。
セクハラやパワハラだけでなく、カスタマーハラスメント(通称カスハラ)や妊娠・出産などに関連する嫌がらせまで、その種類は実にさまざまです。

今回は、そんな“職場のハラスメント”について、最新の動きや対策をわかりやすくお伝えします。

いざというときの備えにも、ぜひご一読ください!

 

●「カスハラ」や「就活セクハラ」も、ついに法律で対策が義務化!

これまで企業に義務付けられていたハラスメント対策といえば、セクハラやパワハラ、マタハラ(妊娠・出産等に関するハラスメント)などが中心でした。

でも、令和7年6月に公布された法改正では、さらに一歩踏み込んだ内容が盛り込まれました。

それが、「カスタマーハラスメント」や「就活セクハラ」への対応の義務化です。

  • カスタマーハラスメントとは、顧客などからの悪質なクレームや暴言などを指します。
  • 就活セクハラとは、採用面接やインターンシップの場面での不適切な言動などです。

これらに対応するために、企業は防止措置を講じる義務を負うことになります。
施行は公布から1年6か月以内の見込みですが、「外部からの嫌がらせからも働く人を守る」という強い姿勢が国から示されたかたちです。

 

「うちは関係ない」はもう通用しない。中小企業もすべての企業が対象です。

実はすでに、パワーハラスメントに関する防止措置はすべての企業に義務付けられています。

中小企業でも、令和4年4月から義務化がスタートしており、もはや「うちには関係ない」という言い訳は通用しない時代になりました…!

 

●ハラスメントにはどんな種類があるの?

「ハラスメント」と一口に言っても、対象となる行為はさまざまです。
厚生労働省では、以下のような代表的なハラスメントを挙げています。

 

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

  • 対価型:「性的な言動を拒否したら、不利益な扱いを受けた」など。
  • 環境型:「性的な発言が職場に飛び交い、働きにくい」など。

セクハラの加害者は、上司や同僚だけではありません。顧客や取引先、患者、学生なども含まれることがあります。
また、被害者・加害者ともに性別を問わず、同性間でも成立することが特徴です。

 

妊娠・出産・育児・介護休業に関するハラスメント(マタハラ・ケアハラ)

  • 「産休を取るなんて迷惑だ」
  • 「また子どもが熱?何回目?」
    そんな発言が職場にあるとしたら、それは立派なハラスメントです。

これは、法律でも明確に禁止されています。

 

パワーハラスメント(パワハラ)

職場での優越的な立場を利用して、精神的・身体的苦痛を与える行為です。
典型的な例としては、次の6つがあります。

  1. 身体的攻撃(暴力など)
  2. 精神的攻撃(暴言、叱責、侮辱など)
  3. 人間関係からの切り離し(無視、隔離)
  4. 過大な要求(到底終わらない仕事の押しつけなど)
  5. 過小な要求(仕事を与えない、誰でもできる作業だけ)
  6. 個の侵害(プライベートに立ち入りすぎる)

 

 

●企業がやらなければならない5つのこと

では、事業主はどのような取り組みをしなければならないのでしょうか。
厚生労働省では、次の5つの措置が「必須」とされています。

①方針の明確化と周知・啓発

「うちの会社はハラスメントを許しません」――その意思表示をはっきりと。

事業主はまず、「職場におけるハラスメントは許されない」という会社の基本方針を明文化し、全従業員に向けて周知しなければなりません。単に紙で掲示するだけでなく、研修や朝礼、イントラネットなどを活用して、繰り返し・具体的に伝えることが重要です。

また、相談した人や調査に協力した人が不利益を受けることのないよう、「報復的な扱いは一切しない」といった姿勢も、明確に示す必要があります。

②相談体制の整備

「困ったときに、安心して声を上げられる場」が必要です。

ハラスメントを受けた人が「誰にも相談できなかった」という事態を防ぐために、社内に相談窓口を設置し、その存在を周知することが求められています。

・担当者の名前と連絡先を明確に
・複数の相談方法(対面・電話・メールなど)を用意
・男女両方の担当者を配置(可能な範囲で)

相談対応者には、適切に対応するための研修を受けさせることも推奨されています。

③迅速かつ適切な事実確認と対応

「あいまいにしない。放置しない。」が基本です。

相談や通報があった際には、できるだけ速やかに事実確認を行い、適切な対応をとることが義務となっています。

・まずは中立的な立場で当事者から丁寧に話を聴く
・第三者によるヒアリングや証拠確認も重要
・必要に応じて加害者への指導、懲戒処分などを実施

さらに、被害を受けた人へのフォローや職場環境の改善も含めて、再発防止策を講じることが求められます。

④プライバシーの保護と不利益取り扱いの禁止

「相談したら職場で肩身が狭くなるかも…」という不安をなくす。

ハラスメントの相談や調査に協力した人が、社内で不当な扱いを受けないよう、プライバシー保護と不利益取り扱いの禁止を徹底する必要があります。

・相談内容や調査結果は、関係者以外に漏らさない
・「あの人が相談したらしい」などの噂が立たないよう配慮
・相談を理由に配置転換や昇進停止などを行うのは厳禁

職場に「安心して声を上げられる雰囲気」があることこそが、ハラスメント防止の土台となります。

⑤ハラスメントの原因・背景要因の解消

「個人の問題」ではなく「職場環境の問題」として捉える視点を。

ハラスメントが起きやすい背景には、人間関係の固定化、過重労働、あいまいな役割分担など、職場環境そのものの問題が潜んでいる場合があります。

事業主は、相談内容や調査結果などを踏まえ、必要があれば以下のような改善策を講じることが求められます。

・業務量や体制の見直し
・上司と部下の距離感に関する研修の実施
・「物言いしづらい空気」の解消に向けた意見交換会

 

これら5つの措置は、すべての事業主にとって「努力義務」ではなく「法的義務」です。
会社の規模や業種を問わず、誰もが安心して働ける環境づくりのために、企業は真摯に取り組む必要があります。

 

●最後に

ハラスメント対策は、「法律で決まっているから」取り組むものではありません。
むしろ、「人を大切にする文化」を育み、信頼や安心感を土台とした職場づくりを実現するための一歩です。

もし、今の職場で「少しでも気になることがある」「昔からのやり方に不安を感じている」「相談体制が形だけになっていないか心配」――そんな思いが少しでもあるのなら、いまこそ見直すタイミングかもしれません。

ハラスメントのない職場づくりは、会社全体での取り組みがカギとなります。トップの明確な意思表示、全社員の意識共有、そして困ったときに相談できる体制の整備――すべてがつながって、安心して働ける「あかるい職場」が生まれます。

当法人でも、ハラスメント防止に向けた制度設計や、社内向け研修・啓発活動のサポート等を行っております。働くすべての人が、大切にされ、尊重される社会へ。その一歩を、私たちと一緒に踏み出しませんか?

 

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