「年休の時季変更権」、適切に使えていますか?―年5日取得義務との違いも整理して解説!

お盆休み目前…年休の「時季変更権」、対応に迷っていませんか?

8月に入り、そろそろお盆休みの取得調整が本格化する時期となりました。
この時期になると、年次有給休暇(年休)の「時季変更権」に関するご相談が増えてまいります。

「希望日に休ませてあげたいけれど、全員が休んだら業務が止まってしまう…」
「どこまで調整できるの?拒否はNG?」――そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、お盆など繁忙期・集中休暇シーズンにも役立つよう、年休の基本と時季変更権の正しい理解、そして「年5日の時季指定義務」との違いについて、実務担当者の視点で分かりやすくお届けいたします!

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◆ 年次有給休暇の「原則」と「例外」

年次有給休暇は、労働者の健康維持や働く意欲の向上を目的として、一定の条件を満たした場合に与えられる法律上の権利です。
原則として、労働者が指定した日(=時季)に休暇を取得できることになっています。つまり、「〇日に休みたい」と言われたら、その日を認めるのが基本です。
ただし、すべての希望に応じてしまうと業務が成り立たない…そんな事態も想定されます。
そんなときに使用者が使えるのが「時季変更権」。これは、事業運営に支障が出るような場合に限って、他の日に年休を振り替えることができる権利です。

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◆ 「時季変更権」って、どんなときに使える?

時季変更権はあくまで例外的な対応手段。
「忙しいから」「休まれると困るから」といった曖昧な理由では認められません。
たとえば――
• 同じ時期に多くの社員が年休を希望し、業務遂行に著しい支障が出る場合
• 特定のポジションの社員が不在だと代替が難しく顧客対応や納期に支障が出る場合
などが該当します。

ポイントは、「事業の正常な運営に具体的な支障が生じるか」です。
使用者としては、できる限り労働者の希望に配慮しつつ、やむを得ない場合に限って、他の日への変更を丁寧に提案することが大切です。

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◆ 「時季変更権」と「年5日の時季指定義務」の違いって?

2019年からすべての企業に義務づけられた「年5日の時季指定義務」。
これは、年10日以上の年休が付与される労働者について、使用者側が時季を指定して年5日を必ず取得させなければならないというものです。
つまり、
• 時季変更権=労働者が指定した日を、やむを得ず別日に変更する“調整的な権利”
• 年5日取得義務=使用者があらかじめ取得日を指定する“促進のための義務”
という違いがあります。

5日指定にあたっても、本人の意向を確認し、合理的な配慮をした上で指定する必要があります。5日以上取得させることが目的なので、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。

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◆ 年休を巡るトラブルを防ぐには?

時季変更権の行使をめぐるトラブルや、5日取得義務の未達成による罰則リスクを避けるため、以下のような整備がおすすめです。

• 就業規則の見直し:

「時季変更権」や「年5日取得義務」の取り扱いについて、明文化しておくことはトラブル防止に効果的です。

• 年休管理簿の作成・保存:

基準日・残日数・取得日など、適切な管理をしておくことが法令上義務です。

• 計画年休制度の導入:

年休の一部を計画的に取得できるようにすることで、事前調整がしやすくなります(労使協定が必要)。

• 職場全体での意識改革:

特定の人に業務が偏らない体制づくりや、「休んで当たり前」の風土づくりが重要です。

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◆ 管理の手間や判断に迷ったら…

「管理簿の付け方がわからない」「誰が対象になるのか判断が難しい」等など…
こうしたお悩みに対し、弊社では実務に即したサポートが可能です!

▼ こんなお困りごと、ありませんか?
• 時季変更権を使えるケースか判断に迷う
• 年5日取得義務の管理に手が回らない
• 年休取得を進めたいが、現場の協力を得にくい
• 計画年休制度を導入したいが、就業規則や協定がネック などなど

年休管理の整備は、企業の働き方改革推進や人材定着にも直結する重要なテーマです。少しでもお困りごとがございましたら、弊社まで是非お気軽にご相談ください!

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