最低賃金が大幅引き上げから改めて学ぶ!「同一労働同一賃金」の考え方

先日、厚生労働省から令和7年度の地域別最低賃金の改定目安が発表され、今年の引上げ額は全国加重平均で63円増、金額にして1,118円。

なんと、昭和53年に目安制度が始まって以来、過去最大の引き上げ幅となります。

最低賃金の上昇は、労働者の生活を支え、消費を後押しする一方で、企業にとっては人件費の増大という現実的な課題を突きつけます。

この局面で大切なのは、単に「最低賃金をクリアすればいい」と考えるのではなく、「同一労働同一賃金」の考え方を再確認し、賃金制度全体を見直すことです。

今回は、この最低賃金引き上げを契機に、改めて「同一労働同一賃金」の基本をわかりやすく整理していきます。

●同一労働・同一賃金とは?

正社員(無期フルタイム)と非正規社員(パート・有期・派遣)との間に、不合理な待遇差をなくすという考え方です。

「どの雇用形態を選んでも納得して働き続けられる社会」を目指し、2020年に「パートタイム・有期雇用労働法」「労働者派遣法」の改正によって法的に整備されました。

特に大切なのが次の2つのルールです。

1. 均衡待遇規定(不合理な待遇差の禁止)

•職務内容や責任の程度、配置の変更範囲などを考慮し、基本給や手当、福利厚生に不合理な差をつけてはいけない。

•例えば「正社員だから将来の役割期待が違う」といった抽象的な説明では不十分。具体的・客観的な根拠が求められます。

2. 均等待遇規定(差別的取扱いの禁止)

•正社員とまったく同じ職務内容・配置で働く非正規社員に対して、雇用形態を理由に差別することを禁じています。

●同一労働・同一賃金ガイドラインで示された具体例

厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、どんな待遇差が問題か、わかりやすく例示されています。

●手当

・時間外手当・深夜手当・休日手当は、正規・非正規に関わらず同一の割増率で支給必須。

・通勤手当や出張旅費も同一支給が原則。

・役職手当・精勤手当などは内容が同じなら同一支給、内容が異なれば差に応じた支給が必要。

●福利厚生

・休憩室、更衣室、給食施設は、全ての労働者に開放。

・健康診断や慶弔休暇も、基本的に同一の付与が求められます。

●教育訓練

・職務遂行に必要なスキル研修は、非正規にも同一の職務内容であれば同一内容を提供する必要があります。

●派遣労働者への特別なルール

派遣の場合は少し特別で、2つの方式から選べます。

1.派遣先均等・均衡方式

派遣先の正社員と比較し、不合理な待遇差をなくす。

2.労使協定方式

派遣元と労使協定を結び、同種業務の平均的賃金以上を保証。成果や能力に応じた改善ルールも必要。

派遣先にも情報提供義務が課されており、透明性が重視されています。

●企業に求められる対応

法律上、非正規社員から待遇差の理由を説明するよう求められたら、企業は応じる義務があります。

説明を求めたことを理由に不利益を与えることも禁止されています。

「説明できない差」は、改善の必要があるサインです!!

●キャリアアップ助成金を活用する

最低賃金の引き上げや「同一労働同一賃金」への対応は、どうしても企業にとって「コスト増」というイメージが先行しがちです。

確かに、賃金や手当の見直しを行えば、一時的に人件費負担が増えることは避けられません。しかし、実はこのタイミングで国が用意している 「キャリアアップ助成金」 をうまく活用することで、その負担を大きく軽減できる可能性があります。

例えば、次のような取り組みは助成金の対象となり得ます。

•基本給や諸手当の共通化

パートや契約社員にも正社員と同様の通勤手当を支給する、職務内容に応じて処遇改善を図るといった制度改定。

•有期雇用労働者の正社員化

契約社員を正社員へ登用する仕組みを導入した場合、その人数に応じて助成金が支給されます。

•賃金規定の整備や就業規則の改定

同一労働同一賃金に沿った形で賃金ルールを見直すことは、将来のトラブル防止と助成金対象の両立に繋がります。

つまり、最低賃金の引き上げと同一労働同一賃金の徹底は、コストアップではなく 「助成金を活用した組織強化のチャンス」 と捉えることができるのです。

●まとめ

・最低賃金は過去最大の引き上げ幅。
・同一労働同一賃金の理解と実践がこれまで以上に重要。
・賃金・処遇の見直しにあたり、キャリアアップ助成金の活用で負担を軽減できる。

未来を見据え、全ての労働者が安心して意欲的に働ける職場づくりを進めていきましょう!

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