【社労士監修】賃金支払い日を変更したい!その時に気をつけたいポイントとスムーズな移行方法とは?

あかね社会保険労務士法人です。

2025年も、人事労務の現場では次々と法改正対応が求められています。その中で、給与計算業務の複雑化が進んでおり、正確性の確保や担当者の負担軽減のために給与計算のアウトソーシング(外部委託)を検討する企業も増えています。

この流れの中で、「賃金の締め日や支払い日」を見直す必要が出てくるケースが少なくありません。また、過去からの経緯で、正社員とパート・アルバイトの支払い日が異なるという企業も多く見られます。たとえば、「正社員は月末払い・パートは15日払い」といった形です。

このような支払い日の違いは、運用面での手間や誤差を生みやすく、今後のシステム化・効率化を進める上で統一を検討する企業も増えています。
ただし、賃金の支払い日は従業員の生活に直結する重要な労働条件であるため、変更には慎重な対応が求められます。
今回は、賃金支払い日を変更する際に押さえておきたい法的な注意点と、スムーズな移行のポイントを解説します!

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1. 賃金支払い日を変更する際の基本ルール
賃金の締め日や支払い日を変更することは可能ですが、労働基準法第24条の「賃金支払いの5原則」にある「毎月1回以上」「一定の期日に支払う」というルールを守らなければなりません。また、締め日・支払い日は就業規則の必須記載事項です。
そのため、変更する場合は就業規則(または賃金規程)の改定手続きが必要になります。

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2. 変更の流れと実務上のポイント
支払い日の変更は、従業員の生活に大きく影響するため、次のような流れで慎重に進めることが大切です。

1. 従業員への通知・説明
変更が決まったらできるだけ早く、理由(例:給与計算を外部委託するため、事務処理の正確性を高めるため など)と内容を説明します。
生活に関わる変更ですので、十分な予告期間を設けましょう。

2. 従業員の同意の取得
支払い日が遅くなるなど、従業員に不利益が生じる場合は、理解と納得を得ることが欠かせません。
必要に応じて個別面談を行い、不安を和らげる補填策を提示します。

3. 就業規則の変更・届出
改定案を作成し、労働者代表の意見を添えて労働基準監督署に届け出ます。
その後、変更内容を全従業員に周知します。

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3. 不利益変更となる場合の注意と対応策
支払い日の変更が従業員にとって不利益かどうかで、就業規則の有効性が左右されます。

(1)不利益でないケース
たとえば「毎月15日締め・末日払い」から「15日締め・25日払い」にする場合、支払いが早まるため不利益にはなりません。
(2)不利益を伴うケース
一方で、「15日締め・末日払い」から「月末締め・翌月20日払い」に変更する場合、移行月の給与が半月分しか支給されないことになります。
このようなケースは生活に影響が大きく、労働契約法第10条上の不利益変更に該当します。
合理的な理由と十分な配慮があって初めて認められます。
不利益をできるだけ抑えるために、企業側では以下のような対応が望まれます。

• 移行月を賞与支給月に設定する(賞与で生活費を補えるように)
• 早めの予告(例:半年前)を行い、従業員が資金計画を立てられるようにする

また、支払い日が遅くなる場合は、住宅ローンやクレジット決済などの引き落とし日に影響が出ることもあるため、十分な説明が必要です。

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4. 労働協約がある場合の注意点
賃金の支払い日が労働協約で定められている場合、就業規則だけを変更しても効力はありません。
労働組合との協議・合意の上で労働協約を変更する必要があります。
良好な労使関係を維持するためにも、協議を重ねて合意形成を図ることが大切です。

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5. まとめ
給与の締め日・支払い日の変更は、給与計算の効率化やアウトソーシングを進める上で有効な手段です。また、パート・アルバイトと正社員で異なっていた支払い日を統一することは、事務負担の軽減や支払業務の正確性向上にもつながります。
ただし、従業員の生活に直結する重要な変更であるため、
法令遵守と十分な配慮が欠かせません。

不利益を伴う場合は、賞与月との調整や早期周知といった支援策を講じ、従業員の理解を得ながら進めることが、トラブル防止と円滑な移行のポイントです。

支払日を変更したいけど、不安がある…といった企業様は、一度弊社までお気軽にご相談ください!

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