モデル就業規則をそのまま使っていませんか?
2026.03.10
労務コラム
あかね社会保険労務士法人です。
中小企業が陥りやすい“落とし穴”とリスクはご存知ですか?
日々の労務管理に追われる中小企業の経営者・人事担当者が、就業規則の作成・見直しにあたってまず目にするのが、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」です。
厚労省のモデルは、労働基準法の基本ルールや代表的な規定例をまとめており、いわば就業規則作成の“出発点”として活用するためのテンプレートです。
しかし、このモデルをそのままコピーして使えば良い、と思い込んでしまうと、意図せず重大な労務リスクに直結する可能性があります。本稿では中小企業にありがちな事例や、モデルそのまま使用のリスク、そして適切な運用のためのポイントを整理します。
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1.そもそもモデル就業規則とは?
厚生労働省の公式ページには、「常時10人以上の従業員を使用する事業場は、労働基準法に基づき就業規則を作成・届出する必要がある」と明記されています。その際の参考資料として、モデル就業規則(令和7年12月版)が公開されています。
モデル就業規則は、労働条件・労働時間・休暇・退職・懲戒などの規定例と解説をまとめたものです。令和7年12月版では、国会議員等立候補休暇の例や特別休暇の追加などが行われましたが、これはあくまで参考例です。
厚労省自身も、モデルは各事業場の実情に応じて内容を検討し、必要に応じて変更するよう求めています。つまり、モデルを丸写しではなく、自社の働き方や組織の実態に合わせてカスタマイズすることが前提なのです。
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2.モデルをそのまま使う“リスク”とは?
① 実態とズレたルールにより労使トラブルが発生する
モデル就業規則は、一般的な例を網羅的にまとめている反面、企業ごとの業種・労働形態・組織文化に応じた設計にはなっていません。そのため、このまま利用すると、規定内容が自社の実務とそぐわず、従業員との間で解釈のズレやトラブルにつながるリスクがあります。
たとえば、
• 変形労働時間制やフレックス勤務の運用ルール
• 休暇取得の申請手続きと要件
• 退職・解雇条件の詳細
など、モデルには一般例しか示されていないため、自社の実務を反映した明確なルール設計が必要です。
② 昇進・賃金体系・福利厚生との不整合
中小企業では、従業員の役割や待遇が大企業と比較して幅広い場合が多く、モデルのままだと昇進基準や賃金規程と整合しない内容が混在することがあります。例えば、中小企業特有の短時間正社員やパートタイマーの待遇設計については、モデル例では抜けがある場合もあり、規定のまま運用すると待遇のトラブル要因にもなり得ます。
③ 周知・運用でミスが生じやすい
就業規則は「作るだけ」で完結するものではありません。労働基準法は、従業員への周知・届出手続きを義務づけており、内容と実際の運用にズレがあれば、労基署の指導対象や法的な問題になる可能性があります。モデルをそのままコピーしてしまうと、自社の実務に即した周知方法や運用フローが整備されておらず、かえって混乱の原因となることもあります。
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3.モデルを“適切に活用”するためのポイント
では、モデル就業規則をどのように活用すべきか。以下のポイントを押さえておくことで、リスクを抑制しつつ有効に活用できます。
① 自社の実態との照合作業
モデルの各条文を単にコピーするのではなく、
• 自社の勤務形態と照らす
• 賃金体系・休暇制度等の実態と整合する
• ルールと実務の運用フローを一致させる
といった照合作業が不可欠です。特に中小企業では、1人1人の役割が多岐にわたるため、単純なテンプレートでは不十分となります。
② 条文ごとに運用ルールを明確化
条件や手続き(申請、承認、期間、賃金計算方法など)を文言だけでなく実務フローとして設計することが重要です。モデルには運用面の明確な指針が必要な項目が多く含まれていますので、自社バージョンに落とし込む必要があります。
③ 社労士など専門家のチェック
モデル就業規則は便利ですが、実務的な落とし穴が多数存在します。専門家によるチェックを入れることで、法令対応と将来の紛争予防につながります。必要に応じて就業規則の改正やチェックを依頼するのも有効です。
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まとめ
モデル就業規則は、就業規則作成の出発点として非常に有用ですが、「そのまま使ってOK」というわけではありません。厚生労働省自身も、自社の実情に応じた内容で作成・届出し、適正な運用を求めています。自社の実務とズレた就業規則は、労使トラブルや法令違反リスクを増大させてしまいます。
モデルは“ベースとして活用する”ことが前提です。自社仕様へのカスタマイズや、必要に応じた専門的なチェックを通じて、「会社に合った就業規則」を整備しましょう。
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