あかね図書室日記:『審査・再審査・裁判例に学ぶ「脳・心臓疾患」「精神障害」労災認定の仕組みを理解する』
2026.07.28
あかね図書室
『あかね図書室日記』は、スタッフが読んだ本を通じて学びを共有するコーナーです。専門性・人間力・組織力を大切にする私たちが、本から得た気づきを少しずつ言葉にしています。

◆書籍:審査・再審査・裁判例に学ぶ「脳・心臓疾患」「精神障害」労災認定の仕組みを理解する/高橋健・筒井直紀/労働新聞社
◆ジャンル:専門力
◆投稿者:山口 夕加里
◆読んだきっかけ
過労死や精神疾患の労災認定について、年々件数が増加していることから、知識をアップデートしなくてはならないと感じていたところ、事務所内でこの本を持っている方がいるのを見つけました。本の中身をチラ見させてもらったところ、参考になりそうであった為、早速取り寄せて読んでみることにしました。
◆内容紹介
主に実際に起こった事例について、解説がされています。一旦労災として認められなかったものの、再審査や裁判で認められたような、悩ましい事例が多いのですが、最初に何故認められなかったのか、再審査等で認められたのは何故かが分かりやすく記載されています。
また巻末には、これらの事例から、企業がどのように労災を防ぐための対策をすればよいかが、簡潔に纏められています。
◆感じたこと、気づき
15年程前に、私がこの仕事を始めたころは、「脳・心臓疾患」や「精神障害」の労災認定はハードルが高く、よほどのケースでない限り認定が下りない印象がありました。
しかし近年、その状況は大きく変わっています。
直近(令和6年度)の労災支給決定件数は、「脳・心臓疾患」で784件、「精神障害」で3,496件にのぼり、右肩上がりの増加が続いています。これは、労災認定における「事実確認の審査」が以前よりも格段に丁寧に行われるようになったことが大きな要因だと見受けています。
実際、この本で挙げられている例でも、かなり丁寧に事実確認の審査が行われている印象を受けます。
例えば、労働時間についてですと、出勤簿に打刻されている労働時間だけではなく、実際に労働に相当する時間がどれだけあったか(休憩は取れていたのか、打刻前後に作業等がなかったか等)を一つ一つ精査されるようです。
また、「精神障害」の原因も多様化してきているようです。
以前は「長時間労働」が主な要因というイメージでしたが、本書の事例を見ると「ハラスメント」や「仕事内容・仕事量の急な変化」などが原因で認定されるケースが増加しています。
職場の人間関係のトラブルや業務の変化は、どの企業でも日常的に起こり得るものです。つまり、今の時代、これらの労災リスクはどの企業とも常に隣り合わせにあります。
人事・労務担当者の皆様におかれましては、巻末に記載されている「対策」の部分だけでも一読されることをお勧めします。自社の労務リスクを見直す上で、大いに参考になると思われます。

