パパ育休の「新常識」。賢い取得の進め方

こんにちは。あかね社会保険労務士法人です。

前回のコラムでは、「産後パパ育休(出生時育児休業)」の制度概要や、企業として押さえておきたい対応ポイントについてご紹介しました。
制度の理解が進む一方で、実際に従業員の方からはこんな声を耳にすることがあります。

「育休を取りたい気持ちはあるけれど、収入が減るのが心配…」
「取得するなら、少しでも家計への影響を抑えたい」

実は、こうした不安は、制度を正しく理解し、“いつ・どのように取得するか”を工夫することで大きく軽減できる可能性があります。

2025年4月の制度改正により、育児休業給付の仕組みはさらに充実しました。加えて、社会保険料免除のルールを踏まえて取得時期を調整することで、場合によっては休業中の実質的な手取り額が、休業前の手取り額と概ね同程度となる可能性があります。
今回は、2026年9月に育休を取得するケースを例に、パパ育休をより賢く活用するためのポイントを解説します。従業員からの相談対応や社内案内の参考として、ぜひご活用ください。

 

■1.2025年4月改正:「実質手取り10割」の仕組み

まず押さえておきたいのが、新設された「出生後休業支援給付金」です。 これまでは休業前の給与の67%が給付金の基準でしたが、原則として両親ともに14日以上育児休業を取得する場合(一定の例外あり)、給付率が80%に引き上げられました。
「80%では2割減るのでは?」と思われるかもしれませんが、ここがマジックの種明かしです。育児休業給付金は「非課税」のため所得税がかからず、さらに休業中は「社会保険料が免除」されます。これらを加味すると、額面の80%の給付金は、実質的な手取り額のほぼ100%に相当するのです。

 

 

■2.「月またぎ」が生む驚きの差:5万円以上のメリット

さらに、労務管理上の「社会保険料免除ルール」を逆算することで、手取りを最大化できます。 例えば、額面月収38万円(手取り約30万円)の方が1ヶ月休む場合、以下の2パターンで比較してみましょう。

パターンA:9月1日〜9月30日(1ヶ月完結)
9月末日に育休中であるため、9月分の社会保険料(約5.7万円)が免除されます。
• 9月の手取り:約30.4万円(給付金80% + 社保免除)
• 2ヶ月合計(9月・10月):約60.4万円

パターンB:9月15日〜10月14日(月をまたぐ1ヶ月)
ここが大きなポイントです。現在のルールでは、「月末に休んでいる」場合だけでなく、「同一月内に14日以上休んでいる」場合もその月の保険料が免除されます。
• 9月: 30日に在籍しているため、9月分が全額免除。
• 10月: 1日から14日まで休んでいるため、10月分も全額免除。
この「月またぎ」により、社会保険料が2ヶ月分(約11.4万円)も浮くことになります。
• 2ヶ月合計(9月・10月):約66.1万円

なんと、パターンAと比べて約5.7万円も手元に残るお金が増える計算になります。「いつから休むか」という数日の違いが、これほど大きな差を生むのです。

 

 

■3.分割取得で「仕事」と「家庭」を両立

「1ヶ月もまとめて休むのは、仕事に穴を開けそうで怖い」というパパには、分割取得がおすすめです。 産後パパ育休(出生時育児休業)は2回、通常の育休も2回、合計で最大4回まで分けて取得可能です。
例えば、お子さんの誕生直後の最も大変な時期に2週間、少し成長して離乳食が始まる時期に2週間といった具合に、プロジェクトの合間を縫って取得することも現実的です。この場合も、各期間で「14日以上」かつ「同一月内」になるよう調整すれば、社会保険料免除の恩恵を賢く受けることができます。

 

 

■4.注意点:キャッシュフローの確認

ただし、一点だけ注意が必要です。育児休業給付金の入金は、申請から通常2〜3ヶ月後になります。パターンBのように2ヶ月にわたって給与が減少する場合、手取りの総額は増えますが、口座から一時的に現金が減る期間が生じます。住宅ローンや光熱費の引き落としに備え、事前に生活防衛資金を確認しておくのがスマートなパパのやり方です。

 

■5.育休はチームを強くする

パパの育休取得は、決して「わがまま」でも「業務の停滞」でもありません。一人が抜けても回る体制を作ることは、属人化していた業務の可視化やマニュアル整備を促し、結果として「誰もが休みやすい、持続可能なチーム」へと進化する絶好の機会になります。
そして何より、お子さんの人生のスタートを共に歩む時間は、何物にも代えがたい財産です。お金の心配を国の制度で賢くカバーし、心置きなく育児に専念できる環境は、今や着実に整いつつあります。
とはいえ、法改正への対応や、個別のシミュレーション、社内規定の改定など、実務面で不安を感じる担当者の方も多いかもしれません。当法人では、こうした制度の設計や運用のアドバイスを通じて、企業の健やかな労務環境づくりをお手伝いしています。もし「自社の場合はどうなるだろう?」と迷われることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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