あかね図書室日記:『大正5年8月24日久米正雄と芥川龍之介への手紙(漱石書簡集より)』
2026.07.20
あかね図書室
『あかね図書室日記』は、スタッフが読んだ本を通じて学びを共有するコーナーです。専門性・人間力・組織力を大切にする私たちが、本から得た気づきを少しずつ言葉にしています。

◆書籍:大正5年8月24日久米正雄と芥川龍之介への手紙(漱石書簡集より)/夏目漱石・三好幸雄編/岩波文庫
◆ジャンル:人間力
◆投稿者:山口 夕加里
◆読んだきっかけ
通っていた高校の図書館に夏目漱石全集があった為
◆内容紹介
漱石から久米正雄と芥川龍之介へ宛てた手紙で、漱石の若い人への思いやりが溢れているように見受けます。
編集者の三好氏は、「牛になって人間を押せ」と副題をつけており、漱石ファンの間では、結構有名な手紙のようです。
私のような文章力が無い者が内容を要約すると、野暮のように思われますので、短い文章でもありますし、是非お手に取って一読いただければと思います。
◆感じたこと、気づき
年長者からの謎の言葉というものがあります。言ってもらった時点や読んだ時点では、言葉としては理解できるものの、何だか消化できている気がしない。何年もの間(個人的には、長いものでは、30年以上)折に触れては思い出し、こういう事かな、ああいう事かな…と思いを巡らして考える。そのうち、自身の経験や他者に起こったことを見聞きしているうちに、「ああ、そういうことか」と合点がいき、やっと謎が解ける。という言葉です。
今回ご紹介した漱石の手紙についても、高校生時代に最初に読んだときは、あまり理解できておらず、「何故、馬のようになろうとすることがいけないのか、牛になることがどうして必要なのか」不思議に思ったものです。
若い時は、はやく一人前になりたくて、馬のようになろうとして、あせっていたようにも思います。
ところが、この仕事に就いてみますと、なかなか思うように自身が成長できないことが多くなりました。我々の業務でいえば、手続き業務や給与計算業務のようなものは、割とすぐにできるようになるものです。一方で、労務相談やコンサル関係のものは、知識だけでは不十分で、ヒアリング力や提案力などの一朝一夕で習得できない能力が必要であるため、修練が必要なのです。
なかなか思うように成長ができないと、腐りそうになる時もありますが、そういう時は、この手紙を読み返すようにしています。
「あせっては不可ません。頭を悪くしては不可ません。根気ずくでお出でなさい…」のくだりを読むと、「ひとつひとつ丁寧に、最善を尽くすことを積み重ねるしかないのだな」と再確認ができるからです。実際、自分の周りで「あんな仕事ができるようになりたい」と憧れている人達は、そのように仕事をしているように見受けます。
牛のように、超然として、うんうん死ぬまで押していくのです…。

